生態生薬学における太陽病中編 PART9
先月は野外研修へ赴いた為、エッサム神田ホールでの研究会は2ヶ月ぶりとなりました。
当日は初夏を思わす暑い陽気。そんな中でも多くのご参加を頂く事ができました。今回からが初参加となる先生方にも足を運んで頂き、生態生薬研究会はこの日も元気に始まりました。
4月の続きを講義して頂く前に。笠井先生には先月の野外研修の中で上がった、スギナの生態について少しお話し頂きました。
「スギナは健康茶として昔から広く知られていますよね。でもスギナって、実はよく分かっていないのです。成分を調べても何故そんな薬効があるのか。よく分かっていない。時としてスギナによって、難病が治る事もあるんです。生態生薬学的に見ても非常に変わった植物で、そこら辺に雑草でいくらでも生えていると思いますよね。でも、ある日いっせいに突然枯れて一切なくなってしまうんです。それが何故なのか、よく分かっていないんです」
スギナの生態から奇跡のリンゴへと話題は広がり、更にカルシウムの謎にまで生態生薬研究会では迫っていきます。
日常では何気ないスギナ一つとっても、非常に変わった植物として講義テーマとなる生態生薬研究会に皆様も是非お越し下さい。
スギナのお話の後は初参加の先生方へ、熱の偏在と皮膚蒸泄の重要性について先ずお話頂きました。
そして講義は柴胡剤へと続いていきます。
「皆さんと(4年前に)小石川植物園に行った時。柴胡剤の説明をするのに考えたんです。柴胡証といったら弦脈ですよね。何故、弦脈になるのだろう。柴胡証と弦脈の関係をどうやって説明すればいいのか悩んだんです。そうしたら、ある時、急に。それこそ中国の春節の爆竹みたいに、電光石火が走り気付いたんです。全ては熱で説明出来るのだと、自信がついたんです。そうしたら、こういう図も一緒に考えられる様になったんです」
モツ煮込みに例えた弦脈の解説などは、生態生薬研究会でしか聞けない講義ではないでしょうか。
休憩を挟み、中盤は相談ロールプレイングを行いました。ご参加頂いた先生が実際抱えるお悩みに対して、笠井先生はどの様に応対しているのか。お店での相談風景を実践して頂きました。
ゲストの先生の主訴は、7~8年くらい前から掻くようになった横隔膜周りだけに出る汗の症状についてです。
「胸より下の部分にビショビショの汗が出るんです。今もお腹の周りにタオルをあてています。顔に暑さを感じた時には、もうお腹に汗をかいています」
相談内容から、原因が何かを一つ一つ問診し突き詰めていく笠井先生。
大事なポイントがたくさんあった笠井先生の処方選定に、多くの先生方が頷きながらロールプレイングに耳を傾けおりました。
最後は恒例、実物の植物解説です。今月は百合をテーマにお話して頂きました。
「薬用に使うのは、このスカシユリではなくササユリやオトメユリ等です。先月の箱根湿生花園に参加された方は分かると思いますが、一番上に一つだけ花が咲きます。それが原種です。百合というのは生薬として使うのだったら、気の病の人たちに使うとあります」
更に、こんな面白い話が飛び出しました。
美人を形容することわざの“立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花”は漢方の証も表現していると語る笠井先生。
「腹直筋が固く攣っている状態が芍薬証。身体がだるいと訴えて座った状態から動けない人を牡丹の証。足元がおぼつかず、いつもふらふらした状態の人が百合の証にあたります」
生態生薬研究会は笠井先生独自の視点をもって生薬や植物を紐解いて行きます。分からない事や日々の疑問質問なども随時受け付けております。
初めてでも無理なく聞ける内容です。是非、生態生薬研究会に御越し下さい!
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