生態生薬学における太陽病下編
8月はお休みを頂いた為、2ヶ月ぶりとなる生態生薬研究会。今にも雨が降りそうな曇り空の中でも、初めてのご参加者様を迎えて今月の研究会もいつもと変わらぬ熱気を帯びて始まりました!
初参加者様に向けて、先ずは皮膚蒸泄についてを講義して頂きました。
「出入、出納という言葉がありますね。物事というのは先ず出してからでないと、入れてはいけないという原則があるのです。病気になったら直ぐに何か飲めばいい足せばいい、と足し算で考えてしまうかもしれませんけども。体調が悪かったら先ず出す事を考えなくてはいけません。傷寒論では、そういう事が書いてあると念頭に入れて下さい。そして最も出さなければいけないものが自分の代謝熱なのです」
ここから先は毛ものについて、日本人の食文化について、炭水化物について、そして皮膚蒸泄へと繋がる話が続いていきました。
皮膚蒸泄の説明の後は恒例となった生薬解説です。今回の生薬は桔梗と竜胆です。
「買ってきたばかりなのですが、竜胆の先っちょが少し枯れてきています。皆さんも経験があると思うのですが。竜胆は買ってきても直ぐ、こういう風になる事が多いですよね。なぜだか分かりますか。竜胆は熱をうんと持っていないと咲かないからなのです。だから日当たりが良いところに置かないと咲きません。家の中に置いとくだけだと、この様にどんどん枯れていってしまいます」
竜胆の生態と特徴をお話し頂いた後、代表的な生薬である竜胆瀉肝湯と膀胱炎の関係を講義して頂きました。
そして桔梗についても、こんなお話がありました。
「桔梗は、肺の瘀血を取る力が強いと言われています。ただの咳止めと思わないで下さい。桔梗も実は竜胆と同じで、山の中の植物ですね。そしてこれも同じで先端にだけ花が付くのです。桔梗もどちらかと言うと、竜胆に近い形です。山の標高の高いところで育ち、同じ様な紫色をしています。その為、炎症性の高い、末端を発散させる力が強いと思って下さい」
花の色ひとつからも薬効を考え導き出していく。そんな生態生薬学でしか聞けないお話が、ここから更に続いていきます!
生薬解説の後は、前回の続きからです。太陽病中編が終わりきらなかった事もあり、笠井先生には先ず柴胡剤について講義して頂きました。そこでも、こんな興味深いお話が上がりました。
「今迄2~3例ありましたが。白湯が好きな方に、補中益気湯を飲用頂くと本当に良く効きます。なんでお湯が好きなのかは、よく分からないのですけど。一つ考えられるのは、お湯ですから浸透圧の問題だと思うのです。通常ですね、胃袋がありますでしょう。いつもお話している事ですが、胃の中に何を捨てているかと言ったら。熱と酸を捨てているわけです。それでは胃の中の浸透圧を考えた場合。胃に味の濃い食べ物が入って来たら、どうなるか」
続きはDVDで是非ご覧下さい。
研究会の後半は太陽病下編についてです。体の中心部に熱が集まる事で起きる結胸・臓結。結胸と臓結、そして処方として下編に登場してくる大陥胸丸を先ずは解説して頂きました。
大陥胸丸の原料である杏仁に関して、笠井先生はこの様なお話をしてくれました。
「杏というのは面白くて、元々は標高の高いところが好きな植物です。梅と比較すると分かりやすいと思うのですが。梅は大体、3月の初めくらいに花が咲きますよね。それからだんだん実が出来てきて、6月くらいで結実します。桜の場合でも4月くらいで開花して、7月くらいで結実しますね。それから杏はというと、ゴールデンウィークくらいで開花するわけですよ。それで梅と同じ時期の6月くらいに結実します。つまり杏というのは、わずか1ヶ月そこらで花が咲き、実がなるわけです。杏に対して、梅は3倍もの月日を要しています。そこから何が言えるかいうと…」
2ヶ月ぶりの生態生薬研究会も相談の場において、直ぐに活用できる情報が多くあったのではないでしょうか。
生態生薬研究会は1月と8月を抜いた毎月第2の日曜日に開催しております。初めてのご参加でも無理なく聞ける内容となっております。少しでもご興味を持って頂けたのなら是非ご参加下さい!
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